ケン・フォレット「鴉よ闇へ翔べ」を読みました

原題の「Jackdaws(鴉)] では読む気がしなかったかも知れません。
「鴉よ闇へ翔べ」という日本語の題はうまくつけられたなと思いました。
ケンフォレットの作品ですから、面白いのは間違いないとは思いましたが。
「針の目」と同じく第一次世界大戦のヨーロッパが舞台の冒険スパイ小説です。
1944年6月、ドイツ軍の占領下にあるフランスで、連合軍のノルマンディー上陸作戦を察知したドイツ軍は、その上陸地点を知ろうと通信網をめぐらせ躍起となっています。
その中心となる電話交換所を爆破するために、イギリスで女性ばかり6人の秘密部隊が結成され、夜闇の中、フランスへパラシュートで降下します。
この中心となるのが、フリック少佐。凄い女性です。
寄せ集めた、爆破の専門家、射撃の名手、運転手、等色んな得技を持つ6人がパラシュートの訓練など急な訓練を受け、フランスへ飛び立ちます。このグループの名が「Jackdaws(鴉)」。
ドイツ軍や秘密警察ゲシュタボはそれを阻止すべく、冷酷非情な摘発等を続けます。
「鴉」は、フランス国内で密かに活動するレジスタンス達と協力して、電話交換所への侵入を試みますが、何人かは囚われ、無残な拷問に耐えられず、秘密を漏らしたり、落命したりします。
このドイツ軍やゲシュタボによる拷問の凄さにぞっとします。
戦争は、人間を人でなくすもの。ドイツ軍に限らず、立場が違えば、どの国でも起こりうる事でしょう。
史実を元にして、フィクションを織り混ぜた、はらはらどきどきの面白い作品でした。
第一次世界大戦を題材にしたものは、どうしても敵役ドイツ軍の暗黒面が浮き彫りにされ、当時同盟国であった日本人として、辛いものがありますが、小説は小説。
イタリアやドイツでも出版されていて、ベストセラーの一位になったとの事です。
スパイもの、戦争もの、冒険小説など、以前はあまり興味がなかったのですが、ケン・フォレットを知ってから、この頃は面白く思うようになりました。
年を取って集中力がなく、大抵の本は2度3度読み返さないと訳が分からなくなって、時間が掛かりますが、この作品はとても読み易くて分かり易く、するすると早く読めました。

鴉よ闇へ翔べ (小学館文庫)

鴉よ闇へ翔べ (小学館文庫)