ケン・フォレット「トリプル」

ケンフォレットの第一作「針の目」に続く第二作「トリプル」は、第一作と同様史実を元にしたスパイ・スリラーです。
「針の目」と第三作の「レベッカへの鍵」を読んで面白かったので、この「トリプル」も読みたいと思っていました。
スパイ物と言うと、あまり人間味が感じられなくて面白くないのではないかと、以前は思っていたのですが、これがケン・フォレットの手にかかると、無味乾燥の様な史実にロマンスも織り込んで、人間味ある作品になっています。
「トリプル」というのは、「三つ巴」。
第二次大戦後の世界で、イスラエルの原爆製造計画にからんで、パレスチナとエジプトが三つ巴で争うのですが、ここへロシアも介入していますし、お互いのスパイや、二重スパイなどが入り乱れて誰を信用していいのかという感じです。
ここでは、かってオックスフォードで共に学んだ男達が敵味方の情報部員として対決するのです。
主人公のイスラエル情報部員ディクスタインは、海上輸送されるウラニウムを奪取する為に命がけの奇策を実行します。巻末近くのこの場面は迫力満点でした。
また、ケン・フォレットの作品には、しっかりした女性が登場して、大切な存在となっています。
実際に、こうしたウラニウムの紛失事件があって、「ウラニウム積載船をハイジャックしたのはイスラエルか」などと書かれ乍も、真相は判明されないままに終わったと言う事です。
歴史にも、世界情勢にも弱い私でも、大変面白く読めました。
もう一作、第四作として、「ペテルブルグから来た男」という作品があるそうなのですが、これも古い作品なので、もう絶版になっているようです。機会が有れば、是非読みたいと思います。