ヨハン・テオリン「冬の灯台が語るとき」

先日読んだスエーデンの作家ヨハン・テオリンの「黄昏に眠る秋」に続く第二作「冬の灯台が語るとき」を読みました。
前作と同じ、スエーデン本島の南東に位置する細長い島エーランド島が舞台。
今回は、その東海岸にある「うなぎ岬」の双子の灯台のあたり。
19世紀の中頃、この灯台が建てられ、難破船の木材などを使って、近くに灯台守の大きな屋敷も建てられました。
この屋敷に次々住んできた人々の人生が、ミルヤ・ランベという女性画家によって記録され残されていました。
ミルヤも母親と二人で、昔、この家の離れに住んでいたことが有りました。
このミルヤの娘カトリンとその夫のヨアキム、二人の子供達の家族四人が、ストックホルムから田舎のこの家を買って越してきました。
荒れた家を自分たちで時間をかけて綺麗に修理するのを楽しみにしていたのです。
ところが、まもなくカトリンが灯台の近くの海辺で水死体となって見つかります。
また、都会に住む人達の別荘も多いので、空き巣狙い、押し込みなど犯罪を繰り返す若者達のグループもあります。
前作に出てきた、老人ホームで暮らす元船長のイエルロフも健在です。
そのイエルロフの兄の孫娘にあたる警察官のティルダは、最近この島の北部に出来た警察署に勤め、これらの事件の捜査に当たります。
妻を亡くし子供達と寂しく暮らすヨアキムは、広い屋敷の別棟の納屋に、隠し部屋の様な祈りの為の場所を見つけますが、ちょっと幽霊話の様な感じのところもあります。
でも、静かにたんたんと話が進むのですが、終わり近く猛烈な雪嵐の中、このうなぎ岬の屋敷に、警察官、押し込み犯人達が集まることになり、息詰まるような展開となります。
前作に劣らず、面白く読めました。
ただ、カトリンとヨアキムの姉(薬物中毒で溺死)が殺されなければならなかった理由が、あまり切迫感が無くて弱く感じられました。
うなぎ岬というのは、架空の地名の様ですが、うなぎ漁師がいて、名の通りうなぎがよく獲れる所となっています。
話の中にも、スーパーマーケットでうなぎの燻製を買う場面があったり、このところの日本でのうなぎ不漁の折から、興味深く読めました。
ロンドン・オリンピックで賑やかなイギリスにちなんで、次はスコットランドが舞台のアランナ・ナイトの歴史ミステリー「エジンバラの古い棺」を読みます。

冬の灯台が語るとき (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

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エジンバラの古い柩 (創元推理文庫)

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