ジェフリー・ディーヴァー「静寂の叫び」

ジェフリー・ディーヴァーの1995年作のサスペンスで、人質解放交渉がテーマの「静寂の叫び」を読みました。
日本で翻訳出版されたのが1997年6月、奇しくも1996年12月にペルーの日本大使公邸が武装ゲリラによって占拠される事件が起き、多くの人質がとられ、97年の4月にペルーの特殊部隊の突入で解決したばかりだったそうです。
このペルーの事件は勿論忘れることが出来ませんが、ディーヴァーのこの作品は、今回読んでみるまで知りませんでした。
ディーヴァーの作品が好きになって、集めているうちに、たまたま手にした一冊だったのです。


三人の凶悪な脱獄犯に、聾学校の生徒と教員を乗せたスクールバスが乗っ取られ、10人が人質となります。
廃屋となっている食肉処理工場に人質を連れ込んで立て籠もった犯人達。
警察とFBIが包囲し、FBIの危機管理チームを率いるポターが犯人側と人質解放交渉に当たります。
聴覚障碍者の少女や教師たち、人を殺すことに何のためらいもない犯人達、ポター達の苦闘の交渉が続きます。
FBI,地元の警察、州警察、保安官、それぞれの考えや作戦もあり、困難な状態の中、犠牲者も出てしまいます。
若い教師のメラニーの奮闘もあり、ハラハラしながらも、最悪の結果は免れるのですが。
映画の「ネゴシエイター」を見たのは随分前の事です。あの映画での交渉はどんなだったか、もう覚えていませんが、ヘリコプターを要求する犯人とポターの交渉の様子が克明に描写され、イライラするほど慎重です。
人質達が解放され、犯人達も護送されて行き、なんとなく終結したかに見えた事件ですが、そこはディーヴァー氏の作品、そんな終わり方はしません。
そこからが本番と言った感じで、驚きの展開となります。
人質事件の交渉の内幕と共に、聾者の世界も垣間見ることが出来た良い作品だと思います。

静寂の叫び〈上〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

静寂の叫び〈上〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

静寂の叫び〈下〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

静寂の叫び〈下〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)