タナ・フレンチ「悪意の森」を読む」


アイルランドが舞台のミステリー、タナ・フレンチ作「悪意の森」を読みました。
新進気鋭の女流作家のデビュー作で、沢山の新人賞を受賞した作品です。
ダブリン郊外の住宅地の仲良しの子供達(少女一人と少年二人)が、隣接する森へ遊びに行き、少女と少年一人が行方不明、もう一人の少年アダムだけは血だらけで当時の記憶が無い状態で発見されます。

二人は行方不明のままに、20年が経ちます。
生き残ったアダム少年は、両親と共にこの地を離れ名前もアダムからロブに変えて成長し、今は殺人課の刑事としてこの地方に赴任し、この森の近くの遺跡発掘現場で起きた、少女殺人事件の捜査に当たる事になります。
この少女は、バレリーナとしての才能を認められ、遠くの学校へ入る事になっていましたが、時々身体の具合が悪くなり不審なこともあったのです。
このあたりは、高速道路の建設予定地で、少女の父親はその反対運動をしているので、その恨みを買ったのではないか、父親の娘への虐待ではないか、昔不良少年グループの父親が関わった事件の仕返しかでは無いかとかの疑いも持たれます。
ロブは仲間の刑事達と捜査に当たりますが、聞き込みに回ったりしても、昔の事件の生き残りの少年だとは知られません。彼は、この事件の捜査のかたわら、昔の事件の事を思い出そうと森の中へ入ったりしますが、思い出す事は出来ませんでした。
殺された少女の家族関係、ロブと警察内の同僚達との人間関係、発掘現場の作業メンバー達の人物像、強引な捜査の様子等が詳しく語られ、長い小説になっています。
少女殺人事件は、思いがけない結果で解決するのですが、20年前の事件は解決しないままです。
これだけ長い作品でありながら、行方不明になった二人については、何一つ分からないままです。私にとっては不満の残る作品でした。何か解決の糸口でもあって欲しいのが、凡人の考えです。

悪意の森〈上〉 (集英社文庫)

悪意の森〈上〉 (集英社文庫)

悪意の森〈下〉 (集英社文庫)

悪意の森〈下〉 (集英社文庫)