アリアナ・フランクリン「アーサー王の墓所の夢」

アリアナ・フランクリンの「女医アデリア・シリーズ」の第三作です。
イギリスの作家の歴史ミステリーで、12世紀、ヘンリー2世の時代です。
第一作「エルサレムから来た悪魔」で、イタリアからイングランドに派遣され、ヘンリー2世の命令でイングランドに留まったままになっています。
そこで知り合ったロウリー(今はセントオールバンズの司教となっている)との間に授かった娘アリー、子守りのギルサ、イタリアから従者として従ってきたサラセン人のマンスールケンブリッジ郊外で平和に暮らしていたのですが・・・
またもや、ヘンリー王から呼び出され、南西部のグラストンベリーへ行くことになります。
ヘンリー2世は、ウエールズとの戦いの際、22年前にアーサー王の埋葬を目撃したという修道士の話を、その甥にあたる捕虜から聞かされます。
折しも、グラストンベリー修道院が火事で焼け、その墓地からアーサー王とその妃グイネヴィアのものと思われる遺骨が発見され、これを政治的に利用したいヘンリーの命令で、その遺骨の鑑定をしなければならなくなったのです。
アーサー王伝説は、様々あって、面白い様なのですが、詳しくは知りません。
この作品は、史実を元にしながら、虚実を自由に織り交ぜたファンタジックな物語になっています。
遺産相続問題で旅をする友人親子の一行との波乱に満ちた旅、アデリアが結婚を断ったために司教となったロウリーとの愛の行方、墓地でない別の場所で発見されたアーサー王のものらしい遺骨とエクスカリバーらしい剣はどうなるのか・・・とても読み応えのある作品です。
最後に、またアデリアを狙うらしい盗賊の眼が無気味で不安です。これが次作に続くらしいのです。

作者のアリアナ・フランクリンさんは、次の第4作を残して逝去されたと言う事でとても残念です。
次作の邦訳出版が待たれます。

アーサー王の墓所の夢 (創元推理文庫)

アーサー王の墓所の夢 (創元推理文庫)