ウンベルト・エーコ「バウドリーノ」を読みました

薔薇の名前」のウンベルト・エーコの「バウドリーノ」は10年ほど前に書かれた作品が最近翻訳出版されたもので、話題になっていたようです。
娘が買って置いてあったので、先に借りて読んでみました。

どんなストーリーかも知らず、「薔薇の名前」が面白かったので、これも面白いかと思ったからです。
北イタリアの田舎育ちの少年バウドリーノが、ふとしたことから神聖ローマ帝国の皇帝フリードリヒの養子となり、パリに留学成人し、学友や、故郷の幼馴染達と東方にあるという司祭ヨハネの国を探し求めて、旅をします。
その冒険話を、ビザンツ帝国の歴史家ニケタスに話し聞かせたもの。
このバウドリーノがかなり嘘つきで、でまかせの作り話をしている様なのです。
勿論これは小説なので、作者の作り話なのですが、本当の歴史上の人物や出来事に、バウドリーノの嘘が絡めてあって、下巻になるとファンタジーのように不思議な生き物が出てきたりします。
ヨーロッパの人々にとって、東洋は「驚異の東方」として、謎に満ちた所だったようです。
中世のキリスト教の世界では、聖遺物、聖人の遺骨等がとても重要視されて、「修道士カドフェル」などの作品にもありましたが、そうしたものの盗難や、争奪、偽物作りなど、信じられないような事が横行したようです。
この「バウドリーノ」でも、「ヨハネの手紙」とか「聖杯」のとんでもない偽物をめぐって、人々が真剣に右往左往します。
皇帝フリードリヒは、北イタリアの諸都市連合の反抗を抑えるべく遠征に忙しく、自国の方はどうなっているのか、気になります。
後年、フリードリヒは、東方にあるという「司祭ヨハネの国」を目指して、バウドリーノ達と遠征中に謎の死を遂げてしまいます。
地理にも歴史にもキリスト教にも知識が無いので、上下二巻を読み終えるのは、ちょっとしんどいものがありましたが、最後近く、フリードリヒの死を巡るサスペンスの謎解きがあって、やっと少し面白く思えるようになりました。

バウドリーノ(上)

バウドリーノ(上)

バウドリーノ(下)

バウドリーノ(下)