庄野潤三さんの「けい子ちゃんのゆかた」

芥川賞作家の庄野潤三さんが、先日亡くなられました。
残念な事に、私は芥川賞を取られた作品は、読んでいません。
息子さんや娘さん達が結婚され、ご夫婦お二人の生活になられてからの穏やかな日々を、エッセイの様な小説にされた一連の作品のいくつかを、図書館から借りた単行本や、娘の買った文庫本、雑誌などで、楽しく読んでいました。
ご夫婦の静かな日常、息子さんや娘さんとそのご家族との楽しい交流の様子、ご近所の方たちとの温かいお付き合いのこと、庭に来る小鳥達や花の話題、優しいまなざしが感じられ、ほのぼのと、読む私も優しい気持ちになれて、嬉しくなれる、そんな作品でした。
繰り返し同じエピソードが語られて、初めて読む人にも、私のように忘れっぽい者にも、懇切丁寧な語り口で、私はいつも「三歩進んで、二歩さがる」と思いながらも、少しずつ新しいエピソードが加わりながら繰り返されるお話を又楽しく読んでいました。
この「けい子ちゃんのゆかた」はこうしたエッセイ風作品をまとめたシリーズの10作目だったそうです。
雑誌の連載がまとめられたものですが、暫く雑誌の連載がないようで、どうされたのかなと気に掛かっていましたところ、お亡くなりになったというニュースで、びっくりしました。とても残念です。
文庫本になったのを、娘が買いましたので、早速読んだのですが、その中では、まだお元気でお幸せな日常がうかがえました。
ただ後記に、娘さんの夏子さん(このお嬢様も、作品の中に度々登場して、とても親しみを感じていました)のお話が載っていて、お父様がご病気で要介護の生活になられていた事がわかりました。
庄野潤三さんの作品で、私も日々の暮らしの中で、小さな幸せを見つけて「よかった」「うれしい」「楽しい」「ありがとう」と思うよう心掛けています。不平不満が先に立って難しいこともありますが。
庄野潤三様、心からご冥福をお祈りいたします。
良いご本を読ませていただいて、本当にありがとうございました。