S.J.ボルトン「三つの秘文字」を読みました

創元推理文庫から新しく出た「三つの秘文字」は、イギリスの作家S.J.ボルトンのデビュー作だそうです。

シェットランドが舞台で、ルーン文字が出てくると言う事で、これは読まなくてはと思いました。
とても怖ろしいストーリーでした。今までに読んだものの中で、一番怖ろしく思いました。
産科医トーラは、船舶仲買人の夫と共に、夫の故郷シェットランドへ引っ越して来て、地元の病院で働き始めます。
新しい家で、死んだ愛馬を自分で埋葬しようと、泥炭地の裏庭を掘っていた時に、女性の死体を掘り出してしまいます。
無残にも、心臓をえぐり取られ、背中に三つのルーン文字(古代北欧ヴァイキングの文字で、収穫、繁殖、生贄を意味する)が刻まれていました。
その上、この女性は、出産して間もない身体であったことが分かります。
彼女の身元が判明したものの、病院の記録にある死亡時期と、検視結果が一年違っていたのです。
この謎を解こうとするトーラと巡査部長のデーナに、妨害の手が伸びて来ます。
古い因習を受け継ぐコミュニティの中で、怖ろしい「女性の誘拐」や「赤ちゃんの売買」等が、シェットランドの最果ての小島にあるクリニックで密かに行われ、沢山の犠牲者がいたのです。
夫と一緒に出掛けた北の海でのセーリング中、悪天候になり、故意に折られたマストや用をなさなかった救命胴衣に危うく命を落としかけ、夫を信じていいのか悩むトーラ、自殺をしたとして収容先が分からなくなったデーナ・・・
ついに、トーラは一人で海を渡り、クリニックに潜入します。
迫力ある場面が、映画を見ている様でした。
それにしても、何故心臓をえぐり取ったり、秘文字を刻み付けたりしなければならないのか・・・
古代から密かに受け継がれてきたカルト集団の習わしなのか、金儲けの隠れ蓑なのか、もう一つはっきり分かりませんでした。
でも、大変面白い作品でした。
現在、あと4作品書かれていて、デビュー以来毎年なんらかの賞にノミネートされたり、受賞もしているというこの作家の作品、次作の翻訳出版が待たれます。

三つの秘文字 上 (創元推理文庫)

三つの秘文字 上 (創元推理文庫)

三つの秘文字 下 (創元推理文庫)

三つの秘文字 下 (創元推理文庫)