「海のカテドラル」を読む

暑い間は、必要最低限の家事をする以外は夏休みと決め、積んであった本を読み終えることにしました。
先ず、スペイン、バルセロナ出身の作家、イルデフォンソ・ファルコネスの「海のカテドラル」を読みました。
14世紀のバルセロナが舞台です。
婚礼の日に横暴な領主に花嫁を奪われた農奴のバルナット。妻は、一旦帰されて子供を産んだ後も領主の館に連れて行かれてしまいます。
バルナットは、息子を連れてバルセロナへ逃げ、身内を頼って陶工として働き、何年もの後、自由民の権利を得ますが、不幸な最後に見舞われます。
成長した息子のアルナウは母への思いを「海の聖母教会」のマリア様の像に求め、その後に新しく建造中の教会の建築棟梁の世話になり、建築用の石材を運ぶバスターシュとして働きます。
それは、重い石を背負って長い距離を運ぶ過酷な仕事でした。
失恋などの重荷から逃れ、戦争に行き目覚しい働きをしたものの、褒美として押し付けられたのは、望まぬ結婚でした。失意のなか、ふとしたことからユダヤ人の家族を助け、お礼として貰い受けた召使の助力で金融業を始め大成功しますが、異端審問という宗教上の落とし穴に陥れられ、すべてを失い、命さえも失いかけます。
厳しい身分制度、ペストの流行、戦争、宗教問題、ユダヤ人への迫害等、史実を踏まえたこの時代のバルセロナを舞台としたこの小説は大変読み応えがありました。
「海の聖母教会」の建築の進行と共に、波乱万丈のアルナウの人生も進み、教会の完成の日を、妻や息子と共に無事迎える事が出来ました。
その陰には、救う事の出来なかった不幸な人生の数々がありました。
昔も、今でも、人間を幸せにする筈の宗教が、不幸にしたり、争いの元になったりする事があるのは、とても悲しいことです。
「海の聖母教会」は現在も実存の教会とのことです。

海のカテドラル 上 (RHブックス・プラス)

海のカテドラル 上 (RHブックス・プラス)

海のカテドラル 下 (RHブックス・プラス)

海のカテドラル 下 (RHブックス・プラス)