「風の影」を読みました

スペイン、バルセロナ出身の作家、カルロス・ルイス・サフォンの「風の影」を読みました。
上下二巻でかなり長かったのと、登場人物がだんだんゴッチャになってきて、読み返したりして長くかかりました。
サフォンの事は知らなかったのですが、娘が買ったのを見て、スペインのバルセロナが舞台のミステリーと知り、これは読まなくてはと思いました。
私は若い頃、バルセロナのペンフレンドと文通をしていましたので、スペインやバルセロナには、とても心惹かれるのです。
スペインは王政でしたが、国王が亡命して1931年に共和制となった後、共和制に反対する軍部の反乱が起こり、1936年から39年にかけての内戦状態の後、フランコ総統の独裁体制となり、75年のその死亡によって王政に戻ったそうです。
この小説の時代背景は、内戦とその前後の不安定な時代です。
主人公のダニエルは古書店主の父に連れられて行った「忘れられた本の墓場」でフリアン・カラックスという作家の「風の影」という一冊の小説を手に入れます。
ダニエルはこの本にのめり込み、この作家の作品を全部読みたいと思うのですが、この一冊が残っていたのが謎なくらい、どこにも残っていないのを知ります。
バルセロナ出身のカラックスは事情があってパリへ行き、そこで執筆活動をしていたのですが、友人の援助で出版された本は残らず焼き捨てられていたのです。
カラックスの事を調べるうちに、その過去の波乱に満ちた人生が、主人公ダニエルの現在から未来の生き方と重なって、読んでいるうちに、不思議な世界へと入り込んでしまった様な感じになりました。
カラックスの不幸な恋愛の恐ろしい結末や、学生時代の同級生の一人で今は刑事となって、執拗にカラックスの命を狙う残酷なフメロ。はらはらしながら読みました。
共和体制内で働いていた為、やはりフメロに狙われホームレス生活をしていたフェルミンは、ダニエル父子の本屋の店員となって、ダニエルの親友となり、力強い味方となり助けてくれます。
ダニエルやフェルミンもフメロに監視され続けますが、カラックスやその恋人だった女性の事を調べ続けます。
次々と恐ろしい出来事に襲われますが、ある女性の手記によって、カラックスにまつわる謎が解けてゆきます。このあたりは、ちょっと安易な感じがしたのですが。
パリから恋人だった女性を探しにバルセロナへ戻ってきたカラックスは、その悲惨な死を知ります。
そしてダニエルと共に、執拗に探し追いかけて来たフメロと闘います。
ついにフメロの死によって、カラックスはパリに戻り、ダニエル、フェルミンも周りの人々と共に、幸せな生活に落着くのが救いです。
スペインは勿論、世界中で翻訳出版され、多くの熱狂的な読者を獲得しているそうです。