アン・クリーヴスのシリーズ作品「シェットランド四重奏」の第3作「野兎を悼む春」を読みました。
「大鴉の啼く冬」、「白夜に惑う夏」に次ぐ「春」です。翻訳出版されるのを楽しみに待っていました。
いつも思うのですが、このシリーズの日本語版の題名が綺麗で好きです。読書欲をそそります。
今度の舞台は、シェットランド本島の北東にあるウォルセイ島という小島。
このシリーズの主人公の一人であるシェットランド署の警部ジミー・ペレスの部下であるサンディ刑事はこの島の出身です。
サンディ刑事が実家へ帰った夜、近くに住む祖母を訪ねて行き、事もあろうに、この祖母ミマが殺害されているのを発見します。
近くに住むサンディーの従兄弟のロナルドが、夜、野兎を撃ちに出て、誤ってミマを撃ってしまったらしいと考えられました。
このミマの住む小農場の敷地の中では、大学院生ハティーが中心となって、遺跡の発掘作業が行われていました。昔、スカンジナビアの国々との交易で財を成した豪商の邸宅跡らしいのです。
発掘現場で、古い頭蓋骨の一部や他の遺骨、銀貨も一枚発見されます。
そして間もなく、ハティが遺体となってみつかります。
閉鎖的な狭いこの島で、ペレス警部とサンディー刑事の捜査が始まります。
中世ヨーロッパの共同体「ハンザ同盟」、第二次世界大戦中ドイツの侵略に抵抗するかっての母国ノルウェーに協力して活動した「シェットランド・バス」等の歴史や、若い頃浮名を流した祖母ミマの過去も絡み、この発掘現場には、掘り返されたくない過去があったのです。
待ち遠しい次作、このシリーズの最終章「秋」はいよいよフェアー島が舞台の様です。ペレス警部の故郷です。
「野兎を悼む春」でも、ロナルドの妻は、この島で取れる羊毛の手工芸品を扱う仕事をしていますし、作品中あちこちに手編みのセーターが出てきます。詳しい説明は無いのですが、この島の住人の母国とも言えるノルウェイ風のセーターなんかもチラッと出て来て、どんなのか、もっと詳しい説明があるといいのにと思いますが、ストーリーと関係がないので仕方がないことでしょう。
次作では、フェアアイルセーター等が出てくるのではないかと、それも楽しみです。
今作では、あまり出番がなかったペレス警部の恋人、画家のフラン・ハンターですが、次作はこのシリーズの最終作なので、この二人の行く末はどうなるのかも気になります。
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