宇月原晴明著「廃帝奇譚」を読む

先日の「安徳天皇漂海記」に続いて「廃帝奇譚」を読みました。

13〜14世紀の中国、大元帝国のクビライ・カーンの命を受けた巡遣使マルコ・ポーロが世界から珍しい見聞を集め、ルスティケロがまとめた本「東方見聞録」を巡る物語が「安徳天皇漂海記」。
廃帝奇譚」はマルコ・ポーロ自身が書きあげた「驚異の書」という本を巡る物語です。
マルコは、「東方見聞録」に描かれた以上に驚くべき見聞をしたものを集めた「驚異の書」を一部だけ作り、彼がモンゴルを去る時、後を継いだ二代目の巡遣使、鄭文海に託しました。
白い革張りのその書物には、ページの中ほどが刳りぬいてあり、琥珀のように光る球体が収められていました。
日本の原初、イザナキ、イザナミの国生みの時に、うまく生まれなかった為に捨てられた「ヒルコ」の他に、もう一人捨てられた不遇の子「淡島」がいたといいます。
天孫降臨の際、ニニギノミコトをくるんで降ろしたという「マトコオウフスマ」が「安徳天皇漂海記」で安徳天皇を包み込んだ琥珀の様な「大玉」となって、海原を漂ってゆきますが、「淡島」は「小珠」となって、「驚異の書」に収められていました。
この書物と「淡島」の球体を手にしていた、元や、明朝の末期の皇帝達のはかなく悲しい滅亡の物語。
また、日本に戻って、安徳帝の弟で、時の執権北条義時隠岐の島に流された後鳥羽院のもとにこの「淡島」が届けられ、院は不思議な幻の世界へ引き込まれます。
歴史は全然駄目な私、日本どころか中国の歴史なんてとんでもない事で、何度読んでもややこしくて駄目ですが、歴史を知らないからこそ余計に素直に楽しめたのかもしれません。
とにかく、この二冊の小説は、奇想幻想に満ちて、とても面白く楽しめました。

幼い頃、驚きながら読んだ「古事記」を、もう少し読んでみたいと思いました。