ジム・ケリーの「水時計」を読む


イギリスの作家ジム・ケリーの「水時計」を読みました。
ジム・ケリーは新聞記者だった人で、その体験をいかして、この小説を書かれたそうで、同じ主人公のシリーズの第一作です。
舞台は、イングランド東部のケンブリッジの北東にあるイーリー。
フェンズと呼ばれる広大な沼沢地帯があります。地図で見ますと、海抜ゼロメートル以下と言う所が多くて、暴風なんかの時は、川の氾濫で大洪水がたびたび起きたようです。
主人公のフィリップ・ドライデンは、この地方の新聞記者ですが、父が洪水の時に行方不明になっています。
2年程前、ドライデンが、妻と一緒に乗っていた車が、対向車に跳ね飛ばされ川に落ち、ドライデンだけはすぐ助けられましたが、妻は救助が遅れ、意識不明のまま入院中です。
11月の凍った川で、発見された車から、他殺死体が出てきます。
翌日、今度はイーリーのシンボルである大聖堂の屋根の修理中に、樋に引っかかったまま白骨化した遺体が見つかります。30年以上前の強盗殺人未遂事件で犯人の一人とされ、海外へ逃亡したと思われていたトミーと判明します。
新聞記者として、両方の事件を調べるドライデンも何者かに狙われる感じです。
ドライデンは、知り合いの刑事に情報を提供するかわりに、自分達夫婦の事故の時の調査ファイルの提供を迫りますが、なかなか入手出来ません。
この刑事の父親が現役の時の事件だったのです。
強盗事件の犯人は三人。この中の一人が、強盗で得た金品を独占、事件の真相を隠す為に、仲間の殺人を重ねてゆくのですが、この犯人が、最後の方になるまではっきりせず、はらはらします。
一週間の間の出来事として、語られていますが、最後にまた大洪水が起こり、その中で、ドライデンは犯人と対決することになります。
題名の「水時計」は、ドライデンの車を跳ね飛ばし、ドライデンを病院へ運んだ車の中にあった包みの中身。その後、ドライデンが訪ねた家に飾ってあった物と知ります。
イーリーというところの沼沢地は、今では干拓が進んでいるとの事ですが、やはり洪水が起こりやすいのでしょうか。
厳しい寒さや洪水との戦いなどの様子も生々しく、ストーリーも過去と現在と行き来して少しややこしかったものの、大変面白く読めました。

水時計 (創元推理文庫)

水時計 (創元推理文庫)