宇月原晴明著「安徳天皇漂海記」を読みました。
娘が買ったこの本が家で目につかなかったら、読む事もなかったと思います。
私は、この作家さんの事を知りませんでした。
源氏との戦いに敗れ壇ノ浦で祖母に抱かれ入水した平氏の幼帝が、琥珀の様な球体に封じ込められて、西の大陸まで漂流、同様にクビライ・カーンの元に滅ぼされ流浪する南宋の幼帝と巡り合うというような、奇想天外なファンタジーというのか、悲しいおとぎ話の様な物語です。
この琥珀の様な玉は、神代の時代、天孫降臨の際、その幼帝がくるまれていた「マトコオウフスマ」で出来ているもの。
南宋が元に滅ぼされ海へ逃れた時、幼帝は工人たちが作った翡翠の珠に閉じ込められ、安徳帝の琥珀の珠とつながれて入水しますが、マルコ・ポーロ一行や天竺の幻術師天竺丸の船団に拾い上げられ、葬送のため南の島ジパングをめざします。
南宋の幼帝の翡翠の珠は家来達の沈んだ海へ葬られ、安徳帝の琥珀玉はジパングに到着します。
ここは、水蛭子(ヒルコ)が黄金色の蜜状の身体となり覆いつくした島でした。
そして、この島を守るのが、その昔、やはり皇太子位から追われ、不遇のまま天竺をめざして南海に消えたといわれる高丘親王の蜜状の像でした。
琥珀の玉は、蜜のうねりの中に飲み込まれ、マルコ達は逃げだしますが、すべては天竺丸の幻術か、マルコ達の見たのは夢まぼろしだったのかも・・・。
これも悲劇の主人公だった源氏の三代将軍実朝や、高丘親王、神代の時代にイザナキ、イザナミの子として生まれながら、不幸にも捨てられたヒルコ、マルコ・ポーロや、天竺の幻術師までが出て来て、歴史に弱い私ですが、思ったより面白く読めました。
また、古事記、吾妻鏡、金槐和歌集等の古典からの文章や和歌も沢山出てきます。
何故か、以前に読んだ古川日出男さんの「アラビアの夜の種族」を思い出す文体で読み易く、不思議な不思議な感じの物語でした。
この本の連作「廃帝奇譚」も有りますので読む予定ですが、他に図書館で借りて来てもらった本が2冊待っていますので、まだ先のことです。
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