「アイルランド幻想」を読む


ピーター・トレメインの短編集「アイルランド幻想」を読みました。
以前に、一度読んだのですが、それから同じ作者の「フィデルマ」シリーズや、アイルランドが舞台の他の作者の作品も読んでいて、これをもう一度読みたいと思っていました。
この「アイルランド幻想」は、民間伝承をもとにして、近代風に書かれた物とのことです。もう殆ど忘れていましたが、11編のどれもが背筋がぞくぞくするような怖い、でも幻想的な面白い作品でした。
それに、翻訳者の後書にあるように、「英国の支配で土地も自由も信仰も言語も奪われ、西の僻地へ追いやられたアイルランド人の、とりわけ19世紀の大飢饉の際に英国の植民地政策のせいで悲惨極まりない地獄を味わされたアイルランド農、漁民の、怒りと恨みと嘆き、慟哭の物語」「トレメインならではの哀しみの翳を漂わせる幻想世界」という言葉がしみじみ感じられる作品集です。